「・・・・・・信じられん」 シヴァの治療に当たったリートは、彼が凶刃に斃れたということより、その容態そのものに息を呑んだ。 彼を負傷させた凶器は【死神】である。触れたもの全ての命を奪うという、いわくつきの魔剣。 しかしシヴァは生きていた。意識こそないものの、心臓は確かに脈打っている。呼吸もある。体温の低下も見られない。 回復速度は彼にしてみれば遅いものだが、それでも、【死神】に付けられた傷が回復するなど信じられないことだった。 同じく【死神】で殺されたエアリィは、普通の剣であったとしても致命的な斬られ方をした。そのため彼との比較はできない。 なぜ、生きている? 半神半魔だから魔属性の【死神】に対する抵抗が小さかったのか。生命の象徴である太陽を司る者だからか。それとも。 (【死神】の伝承自体が間違っていたのか・・・・・・) 今のところ思いつく可能性は、その三つしかない。――いや、正確には四つだ。 シヴァ自身に【死神】に対する免疫がある、という可能性。 双子の妹であるアビスが【死神】保持者であるというのなら、その可能性も十分にありえる。彼女との共通点が多い分、免疫があるなら どういった兆候が見られるかなどは全く判らないが。 (・・・・・・調べるしかないな) 半神半魔の性質と、太陽神について。そして【死神】について。それらを当たれば、いずれ行き着くだろう。 (馬鹿は死んでも治らない、というのは本当だな) 自分でも呆れて溜息が出てくる。自他共に認めるこの学術馬鹿は、人間だった時からずっと変わっていない。 リートは踵を返し、机の上に置いてあった書類を一枚掴んで握り潰した。 『死亡届』 一番上にそう書かれ、シヴァの名もすでに書き付けてあったそれをごみ箱へと投げ入れ、リートは処置室を出て行った。 |
up date 05.03.22.
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