ALICE in CRAZYLAND


ある晴れた昼下がり、市場へ続く道♪
え?・・・あぁ、はいはい。これはドナドナだったね。間違えたよ。
ある晴れた昼下がり。市場へは続かない。大きな栗の木の下で。
それも違う?じゃあ面倒だからもう気にしないで。
とにかく、ある晴れた昼下がり、木の下で。どこぞのお嬢アリスとその姉が読書をしてた。
「あー暇だわ。何か事件でも起きないかしら」
アリス、寝転がってお菓子食べながら不穏なことを呟かない。特にラストは重要だよ、レディとして。
「だってホントに暇なんだもの。姉さん、一人で熟読しちゃってるし」
それもそうだね。・・・ナレーターと会話する事に違和感とか感じないの?
「なんでよ?」
感じないのか。ふーん。
ところで、君の姉さんは何の本読んでるのさ?広辞苑?・・・あ、「果てしない物語」だって。好きだねぇ、そういうの。
「・・・・・・」
普通、一緒に読むなら読み聞かせるとかしない?しないの?しないのか。
「・・・・・・・・・」
何か反応しようよ。
「無理だと思うわ。姉さん、読み始めたら止まらないから」
そうだね。ヘタすると一日中、同じポーズで同じ場所に座って本読んでそう。
「よくあることよ?」
当然のように答えたね。
あ。何アレ?
「ウサギだわ」
チョッキ着て時計持って二足走行してるけど、ウサギには違いないね。
「何か叫んでるわ」

「大変だ、遅刻するっ!女王様に殺されるー!!」

これは・・・アリス、事件だね(ニヤリ)
「えぇ、事件ね」(ニヤリ)
追いかけるしかないよね。
「当然でしょ」
それじゃあ早速、れっつごー!


「ぅわっ!?なんか追いかけてきてるよぅっ!!」
「チッ、気付かれたわ。しかもスピードアップするなんて・・・やるわね」
なかなかに余裕だね、アリス。あんまり追い詰めないほうがいいよ?あのウサギ、気が小さそうだから。
「そうね、ウサギはストレスで死ぬっていうものね」
そうそう。
「あっ!あのウサギ、穴の中に入っちゃったわ!泥汚れだけならまだしも、かぎ裂きなんか作っちゃったら、あとで姉さんが 怖いのよ!?そうなったら、覚えておきなさい!」
ホントに君、余裕だね。大丈夫、姉さんには僕から言っとくから。・・・ね?
「じゃあ任せたわ。・・・えいっ!」
わぉ、思い切りのいい飛込みだね。っていうかスライディングだね。
中の様子はどう?
「んー、落ちてるわ」
慌てようとかいう気はないの?
「ないわ」
そう。
「ただ落ちてくだけってのも暇ねー」
そう?壁を見てみなよ。
「・・・地図?あら、鏡?くし?何なのよ、ここ」
穴の中。
「そんなことは分かってるわ(怒)」
じゃあ気をつけてね?穴を落ちていけば底に着くものさ。
「え?・・・きゃっ!」
ドスンッ!
うっわ、すごい音したね。尾骨とか大丈夫?
「変な心配の仕方しないでよ。・・・別に痛くないわ」
神経のほうがヤバいかも。
「どういう意味よ」
ほらほら、ウサギが行っちゃうよ?
「え?あーっ!待ちなさい!」
ふぅ、話題逸らし成功☆
「後でゆっくり聞かせてもらうわ」
チッ。
「とにかくウサギ!待ちなさい!あたしの脚力をなめんじゃないわよ!」
「!?・・・ひっ・・・・うわ―――――――――――――――――っ!怖いよ――――――――っ!!(泣)」
アリス、物凄い顔してる。ウサギがビビってるよ。
「私の顔が凄いんじゃないわ。あっちが小心すぎるのよ」
・・・わーぉ。
「遅刻して女王様に殺されるのも嫌だけど、あの子に捕まっちゃうのも嫌だっ!」
ガチャッ
バタンッ!
「あ、あんなとこに入っちゃったわ」
めちゃくちゃ小さいドアだねぇ。あのウサギもよく入れたよ。
「どうやって入るのかしら?ウサギにできてあたしにできないことなんかないわ」
敵対心丸出しだね。
「だから、うるさいわよ」
そ?じゃあ、もう何も言わないよ。
君の後ろにいつの間にかテーブルが置いてあって、その上に瓶が3つほど意味ありげに並んでるのだって、どうでもいいんだね?
「テーブル?瓶?・・・あら。」
僕が思うに、この三つのうちのどれかを使うとドアが通れるようになるんじゃないかと。
「何か、紙が置いてあるわ」

三つのうち、どれかを選びなさい

・硫酸→ぶちまける

・アルコール→飲む

・不思議なジュース→飲む

どの手段をとっても、あなたはドアの中に入れます。

「迷うわね」
迷うんだ。
「3つのうち、どれを選んでもはずれはないんでしょ?だったら、これでいいわ」
アルコール?でも君、まだ20歳未満じゃ・・・って、飲むの早いよ!
あぁ、もう酔ってるし!
「うふふ、ふふっ・・・vあたしは、ウサ公なんかに負けないわよ?えぇ、負けないわ。負けたりしてたまるもんですか!!」
ドガアァァアンッ!!
うっわ、ドア蹴り壊したよ!
危ないなぁ、衝撃でテーブルの上の硫酸とか落ちてきたらどうするのさ!?
「あははははっ!心配いらないわっ!えーいっ☆」
ガシャーンッ、パリンッ!
ちょっ、何硫酸入りの瓶、ドアに叩きつけてんの!?
ドアのあった場所、もう穴が開いてるだけになってるよ!
「ほーら、これで侵入もカンタンよ!」
いや、アリス!侵入の前に君が危ないよ!もう千鳥足じゃないか!
「ひっく、うるひゃいわねぇ、あたひはらいじょおぶよぉ・・・」
ほら、ろれつも怪しくなってきた。おとなしく酔いを醒ましてからにしなよ。
「おろなひくぅ?もっろ酒もってきなひゃい」
『もっと酒持ってきなさい』ってねぇ、だから君は未成年なんだって。
「・・・(ぐぴっ)」
げっ!?あの怪しい『不思議なジュース』とかいうやつ飲んでる!?
それは酒じゃないって!
「ひっひっひっひっひ・・・」
笑ってる場合じゃない!縮んでる、縮んでる!
下はさっきこぼした硫酸の海だよ!?どうする気なのさ!?
「ジュース投下ぁ〜」
ジュースで硫酸を中和!?飲み残し程度しかない液体でできるものなら・・・!
ジュワァァアアッ
できたよ。
でも、怪しい色に変わったよ・・・ダークグリーン?なんかヤな色。ゴボゴボいってるし。
ドボーンッ
「あー・・・気持ち悪っ」
酔いは醒めた?アリス。
「醒めたわよ。今は二日酔い」
あぁ、どうりで不機嫌なわけだ。っていうか、泳がないと沈むんじゃない?
「平気っぽいわ。何もしなくても浮いていられるもの」
・・・『不思議なジュース』のおかげかな・・・。
「そうかも。ま、このまま浮いててもしょうがないし、泳ぐとしましょ」
バシャァッ
「はい、イチ、ニィ、サン、シ!」
「ファイブ、シクス、セヴン、エイト!」
「・・・あたし、ドードー鳥とネズミとアヒルのシンクロナイズドスイミングなんて、初めて見るわ」
奇遇だね。僕もだよ。
「さっさと退散しましょ」
そうだね。
ところでアリス、君のバタフライはずいぶんと綺麗なフォームだね。どこで覚えたの?
「知らないわ。無性にこういう泳ぎ方がしたくなったの」
まさか・・・これもジュースの?
「あたしに聞かないでよ」
それもそうだね。
もうすぐ陸に着くよ。頭ぶつけないように気をつけてね。
「了解」
ザバァッ
「ひっ!さっきの!?」
あ、ウサギ。やっぱアリスを怖がってる。
「!ここで会ったが百年目ぇ・・・、とっ捕まえてくれるわ!!」
ダッシュ!!
速い速い。陸上選手になれそうな勢いだよ。どっちも。
文字通り必死で走るウサギと怨念にも近い執念で走るアリス、どっちが勝つだろうね。
「にっげろー!」
ガチャッ
バタンッ!
「チッ、またあんなとこに入って・・・!」
あのウサギの家じゃない?ほら、ここに『白井ウサギ』って表札が。
「ふざけた名前ね。とにかく、あたしも入るわ!」
はい、不法侵入☆
「バレなきゃいいのよ」
何気に凄いこと言ってるよ?気付いてる?
「どうでもいいわ」
そう。
ガチャッ
「狭いわ」
他人の家に不法侵入して文句言わないの。
「あら?また何か置いてある」
無視?
「今度は一つしかないわ」

飲め!

「よく分かんないけどムカつくわ」
その気持ちはよく分かるよ。
「でも、コレ飲んだおかげで色々ご利益(?)あったし」
う〜ん、それは否定できないけど・・・
「飲むわ。(ぐびっ)」
って、また早いよ!
しかも今度は巨大化してるし!
「小さくなったり大きくなったり、あたしも忙しいわねぇ。ただでさえ狭いのに、腕とか窓から出さなきゃいられないわ」
・・・危機感のかけらもないんだね。
「こういう時って、慌てるだけ損な気がしない?慌てたりして暴れても、そこらじゅうぶつけて痛い思いするだけよ」
まぁ、そうなんだけど。でも君は落ち着きすぎ。
「慌ててほしいの?『きゃー巨大化してるわ助けてー』」
棒読み?
「意識的に慌てられるもんじゃないと思うけど。いたっ」
どうかしたの?
「頭に何か当たったわ」
あぁ、外から投げつけてるみたい。クッキーを。
「あの大きなばけものをやっつけろっ!」
だってさ。アリス?
「ふふ・・・クッキー如きで、あたしはやっつけられたりしないわよ!!」
すっごい大声。威嚇もしない。ほら、みんな驚いて逃げちゃった。
「ここの奴らはみんな小心者なのね」
決めつけるのもどうかと思うな。
「じゃ、少なくとも今まであたしが会った奴らは小心者。・・・このクッキーおいしいわ」
『拾い食いはいけません』って、小さい頃に教わらなかった?
「今まさに小さくなってるわ」
!?
だから、そういう時には慌ててよ!
「だから、意識的に慌てるなんて器用なマネできないわよ」
うっ・・・それもそうだけど・・・
「ここまで小さくなれば出て行けるわ。あー、首とか痛いわ。ずっと天井に当たってたものね」
君もマイペースだね。もう少し驚いたりする気持ちはない?
「ないわ」
さっきも似たようなやりとりした気がするな・・・
「まぁいいわ。とりあえず、通常サイズに戻るのが最優先事項かしら」
そうだね。あぁ、あのキノコの上にいる青虫っぽいのにでも聞いてみたら?
「そうするわ。・・・ねぇ、そこの青虫さん?」
「お〜、何だぁ?」
うわぁ、眠そう。寝ながらタバコ吸うのは止めたほうがいいと思うな。寝タバコは火事のもとだよ。
「大きくなるにはどうすればいいか知ってる?」
「このキノコ、食え。ただし食いすぎには注意しろ」
ガブッ。
丸かじり!?
「あらあら」
アリス、今度は首だけ伸びてるよ!
「言われなくても分かるわよ。・・・これじゃ、大きくなったとは言えないわねぇ」
首だけじゃあね。
「もう一口食べたら戻るかしら」
首だけ下げて食べるの?
「手で掴んでも届かないじゃない」
まぁね。
ガブッ。
「・・・あ、戻ったわ」
「ヒッヒヒヒ!なかなか愉快なことやってるネェ、おジョーちゃん?」
わー、なんか変な猫がいるよ。
「しっつれいな。俺はチェシャ猫っつーの。変な猫なんて名前じゃねぇよ」
君もナレーターと会話できるんだ?
「俺に不可能はないね!」
「じゃ、『白井ウサギ』とかいうフザケた名前のウサギがどこにいるか教えて」
「いいぜぇ?向こうにイカレ帽子屋と三月うさぎと眠りネズミがティー・パーティやってる。そいつらに会うといい。じゃあなっ!」
「・・・消えちゃった」
ビミョーな会話だったね。
「相手がアレじゃ、ね。・・・とにかく、そのティー・パーティとやらに行ってみましょ」
了解。


「イェ―――――イッ!何でもない日オメデト―――――っ!」
「おめでとう。はい、乾杯」
「ぐぉ〜・・・・・・」
「あれかしら」
帽子屋、うさぎ、ネズミ。ティー・パーティの真っ最中。あれに間違いないと思うよ。
「ねぇ、帽子屋さんにうさぎさん?ここを白井ウサギが通らなかった?」
「通りましたか、ミスター?」
「見てないな、レディ」
「というわけで、あなたも一緒にどうです?」
「ワインとジュース、どっちがお好みで?」
何が『というわけで』なのさ、三月うさぎ。
帽子屋、ワインなんてないよ。すみやかに眼科に行くことをお勧めするよ。
「遠慮するわ。じゃあ、さよなら」
無難な選択だね。僕が君でも、『不思議なジュース』飲み交わすティー・パーティはごめんだよ。
「あれ、すっごい味するのよ。さくらんぼのタルトとカスタードとパイナップルと七面鳥の丸焼きと飴玉と熱々のバタートーストを全部混ぜたみたいな味。 何が何だかよく分かんないの。できることならもう飲みたくないわ」
げっ。
「あーあ、この先どっちに行けばいいのかしら」
「お悩みのようで、おジョーさん♪」
出た、チェシャ猫。
「まぁだウサギをお探しかい?そんなにウサギに会いたけりゃ、ハートの女王のところへ行きな」
「そこにウサギはいるの?」
「さぁねぇ。ウサギだってじっとしちゃあいるまいよ。アンタだって動くんだ、ウサギが動かないなんて言い切れないさ」
「それもそうね」
「GOOD LUCK!ご武運を祈る。首をはねられんように注意しな」
「・・・なんですって?首?」
いや、アリス。もうチェシャ猫消えちゃってるから。
「早いわ」
君と同じくらい、ね。


「気をつけろよ5番、ペンキがかかった!」
「うるせぇな2番、文句言う暇があるなら早くしろよ。女王陛下に首をはねられたくなきゃあな」
バラにペンキ塗り?また妙なことやってるね。
「しかも、トランプの園丁が塗ってるのよ?こんな妙なことってないわ」
今までのも十分に妙だったけどね。
「ねぇ、なんでバラに色を塗ったりしてるの?」
「そりゃお嬢ちゃん、決まっとりやす!ここには赤いバラを植える予定だったのを、間違えて白いのを植えちまったからでさぁ!」
「植え替えればいいじゃない」
「そんなわけにもいかないんでやす。女王陛下は今日、ここをお通りするんでやす」
「だから、こうして色を塗ってるんでぇ。―――あぁっ!?女王陛下がお出ましだ!早くひれ伏すんだ!」

「ハートの王様と女王様のお通りだーっ!」

「あっ、ウサギ!」
すごく緊張してるみたい。君に気付かないなんてね。
「あれが王様と女王様?」
チェシャ猫が言ってたのは女王だね。
しっかし、目つきの悪いキングといかにも悪役が似合いそうなクィーンって、すっごい取り合わせ。
ガシャッ!
「どうした、クィーン?拳銃なんか取り出して」
「どっかで私の悪口が聞こえたわ。『いかにも悪役が似合いそう』とかって」
聞いてたの!?
「あたしほどしっかり聞こえてたわけでもなさそうよ。相手がナレーターだって気付いてないし」
そうだけど、ドキッとするんだよ。
あ、クィーンがバラの塗り残しに気付いたみたい。さっきのトランプの園丁に詰め寄ってる。
「このバラは何?私が植えるよう指示したのは赤いバラよ?純潔の白バラじゃなくて、情熱の赤いバラ!」
すっごい指示の仕方。
「衛兵!この者達の首をお刎ねっ!」
「ちょっと待ちなさい、そこの悪役ヅラの女王!!」
って、いつの間に!?
アリス!クィーンに喧嘩売ってどうする気!?
「ぶっ潰す。」
えぇ!?
「・・・だ・れ・が、悪役ヅラですって?」
「あんたに決まってるじゃない」
怖っ!
「私に逆らう気?」
「当然じゃない!あんたねぇ、この園丁の身にもなってみなさいよ!あんたのためにしなくてもいい苦労をして、残業手当も もらえないのよ!?そんな哀れな園丁の胃壁に穴が開かないか、少しでも心配した事があるのかしら!?」
微妙な心配の仕方だね。
「あるわけないでしょ?私が法律なの!全ては私に従いなさい!」
キング!それでいいの!?
「おいクィーン、それは少しわがまま・・・」
「あんたは黙ってなさい(睨)」
「スイマセン」
諦めるの早いよキング!クィーンの睨みには勝てないってこと!?
「多分『クィーンに』っていうか女に勝てないのよ、この王様」
なるほど。納得した。
「あぁ、もうっ!きりがないわ!裁判にかけてやる!」
「望むところよ!」
アリス、売られた喧嘩は買わなくても損しないから!もっと冷静になって!
「うるさいわね!私は売られた喧嘩は高値で買い取る主義なのよ!」
・・・これじゃ、もう止めても無駄なんだろうなぁ・・・・・・


法廷にて。
「ちょっと待ちなさいよ女王!なんであんたが裁判官やろうとしてんのよ!?」
「言ったでしょ?私が法律なのよ。」
わー、強引ぐマイウェイ。
これは手ごわい相手だよ、アリス。
「分かってるわ。だからこそ潰しがいがあると思わない?」
君も、我が道を突っ走ってるよ。
カン カンッ
「開廷ーっ!」
いよいよ、クィーンVSアリスのデスマッチ開催だね。
「っていうかあたしは罪人じゃないわ!」
罪人じゃないよ、被告人。
「大して変わんないわよ」
それもそうだね。
「あんたは私に訴えられたから被告人。さぁ、布告役!告訴状を朗読しなさい!」
布告役って、例の白ウサギ?アリスの睨みにもクィーンの睨みにも怯えてるんだけど。
「え、えっと、えっと、ひ、被告人は、じょ、じょ、女王様に対して、敬意を払わなかったんだ、そうです」
ほら。かみまくり。
「では、判決を言い渡す!」
早っ!
「あっ、お、お待ちください女王陛下!まだ証人を呼んでおりません!」
よく言った!
「じゃあとっととお呼び(怒)」
そんなに怒気のこもった目で見ると、ウサギの胃に穴が開くよ。なにしろストレスで死んじゃうらしいし。
「ほっときなさい。あのウサギ、実は結構タフなんじゃないかとあたしは思うわ」
そう?あんなに弱気で?
「『窮鼠猫を噛む』って言うじゃない。妙なとこで頑固だと見たわ」
よく分かんないよ、その例え。
「馬鹿」
馬鹿っていった奴が馬鹿。
「被告人、私語は慎むように」
キング、いたの?影薄いねぇ。
「証人が来たわよ。・・・って、あのイカレ帽子屋と三月うさぎじゃないの!」
眠りネズミはさすがにいないね。いても寝てるだけだろうし。
「証人!速やかに証言しなさい!」
短気だね、クィーン。
「えー、被告人は無罪であるという説に一票」
「じゃあ俺は、有罪であるとゆー説に一票」
一体それのどの辺が証言なのか、よーく聞かせてもらいたいね。
「有罪が一票、無罪が一票。判決を下すには、もう一票必要だな」
キング?何で普通に裁判を進めてるわけ?
「第二の証人、カモン!」
え?もう証人の席にはだれもいない・・・って、何か出てきたよ。
あれは、まさか。
「ヒッヒヒヒ!呼んだかイ?」
やっぱり。
「・・・チェシャ猫・・・今度はあんたが証言するの?」
「証人として呼ばれた以上、そーなるなぁv」
楽しげだね。
「そぉりゃあ、楽しいからさ」
「しょ・う・に・ん!?とっとと吐きなさい!」
ホントに短気だね、クィーン。
「おーやおや。俺も罪人扱いかい?まぁいい。誰が有罪で誰が無罪かなんて、誰にも分からんと思わねぇか?」
たまにはいいこと言うね。
「たまには?いつもさ」
「これで有罪が一票、無罪が一票、どちらでもないのが一票。クィーン、どうする?」
「判決!私刑!」
私刑って、リンチ!?
「そう言って女王はおもむろにトランプの束を掴み、すさまじい勢いでトランプ手裏剣をアリスに投げつけた!」
チェシャ猫!ナレーターの仕事奪わないでよ!
シュシュシュシュシュッ
「きゃっ!何すんのよ!?」
「オーッホホホホホ!これこそ私刑(リンチ)!刺身になりなさい!」
「逃げるアリス、追いかける女王!さぁ、勝つのはどっちだ!」
「いたっ!痛いじゃないの!いたたたたっ・・・












 ・・・いたっ」
お目覚めかい?アリス。
「姉さん、葉っぱが顔の上に積もってるわ。あたし、そんなに寝てた?」
「そのようだ。だがまず、それをどけてから喋れ」
「そうね。葉っぱの先が目に入って痛いのよ」
だったら、なおさらどけるべきだね。
「ずいぶんと変な夢、見たの」
「ほう?後で聞かせてくれ。・・・日が暮れてきたな。帰るか」
「はーい。ところで姉さん、スカートが似合ってないわ」
「余計なお世話だ。文句だったら、あの暗黒の支配者にでも言え」
「ごめんなさい。もう何も言わないわ」
「それでいい」
そして二人は、オレンジ色の光を浴びつつ、仲良く手を繋いで家路に着きました、と。


「・・・さっきまで自分達が根元に座っていた木の、その枝の上に、二人を見て笑う影があるなんて・・・知らずに、な」


・・・チェシャ猫?

「ほんっとうに、あれは夢だったのかねぇ?」




言い残して、チェシャ猫は――――・・・消えた。









― And that's all? ―








キャスト

ナレーター:良識を持ったリュオン
アリス:グレーテル
姉さん、ハートの王様:ライ
時計ウサギ:やや幼いヘンゼル
青虫、眠りネズミ:ギルバート
チェシャ猫、イカレ帽子屋:カイン
三月うさぎ:フローラ
ハートの女王:マイシェル




後記。

焼きそば童話パロディ、第2弾。「不思議の国のアリス」編です。
かぐや姫に続いて、またもやライが女装してますね。スイマセン、描いてて楽しいんです。(変態!)
いやー長い長い。原作を片手に書いてたら、意外に知られてない場面が多くて驚きでした。
ホントはもっと長かったんです。『偽ウミガメの身の上話』だの『豚とコショウ』だの『女王様のクロケーの会』だの。
皆さんはご存知ですか?こんな場面があったの。
なかなか奥が深い作品だと思いました。
これを書くにあたっていろいろ変更はしましたが、ラストの謎っぽい感じと「And that's all?(それでおしまい?)」は気に入ってます。
こういうの、好きなんで・・・(照)

本文が長かった事ですし、後記はここまでにしておきましょう。
もっと語りたくもありますが、ね(蹴)



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