『神々の宴』に登場する神・悪魔の中には、ギリシャ神話などから名前を借りた方がいます。
ここでは、その実際の神話においての姿を当人達に紹介してもらおうと思います。



++ GOS ++

アンディーン

Undine
うーん・・・私が誰だか、お分かりになる方はいらっしゃるんでしょうか?
第一話に登場して、すぐに殺されてしまうのですが。
きちんとお話しするのはこれが初めてなので不具合もあるでしょうが、頑張って説明致します。
出典は特にありません。強いて言うなら「伝承」が出典になるでしょうか。発音も「アンディーン」より「ウンディーネ」としたほうが 一般的ですね。16世紀の錬金術師パラケルスス(Paracelsusu)が定めた、四大精霊の中の一つです。
ラテン語の「unda(水・波の意)」に形容詞語尾「ine」という綴りからお分かりのように、固有名詞ではなく水を司る精霊の総称です。
ちなみに他の四大精霊は、サラマンダー(salamander/火の精霊)、シルフ(shylph/風の精霊)、ノーム(gnome/地の精霊)。 わりと良く知られた名だと思います。
ウンディーネは湖や泉に住むとされておりまして、大抵は美しい女性の姿で描かれます。男性も存在するんですけどね。
他の妖精や精霊に比べ、人間と恋に落ちることが多いのも特徴です。
四大精霊は魂が無いとされておりますが、人間と結ばれれば魂を手に入れられるのだそうです。
けれど、もし相手が水辺でウンディーネを罵ったりしようものなら、彼女は永遠に水中へと戻らなくてはならなくなってしまい、他の女性に 心を傾けようものなら、彼の心変わりを責め、彼女の同族が付近の水辺から一斉に襲い掛かってくるそうです。
そしてもし、ウンディーネに去られたからといって再婚したりしようものなら、彼女は夫の命を奪いに現れるんだそうですよ。
そんな決まりごとがあるせいか、彼女達の物語は殆どが悲恋に終わっています。心変わりは避けられないのでしょうか・・・。
ウンディーネが登場する作品として有名なものに、フーケーの「水妖記(ウンディーネ)」と戯曲「オンディーヌ」があります。機会が あったら、是非そちらもどうぞ。
ヴァルナ

Varuna
どーも初めまして。
説明しろ、って言われたんですけど・・・どの辺からどの辺まで説明すればいいんでしょう?
オレの知ってる情報なんて、そんなにないんだけどなー・・・。
まぁいいや。とりあえず片っ端から説明してく、ってことで。
えーと、まず出典。これはインド神話です。「青空」を意味する天空神で、司法神や風神、水神や海上の神なんかの一面も持ち合わせてます。
海底にある山「プシュパギリ」に神殿を持っていて、マカラという亀の霊獣に乗って国を視察しているんだそうですよ。
妻はヴァルナーニ、息子はアガスティア(Agasthya)。 ヴェーダ(Veda/もと「知識」の意)では雷神インドラ(Indra)、火神アグニ(Agni)とともに重要な位置に置かれたそうです。光栄ですね。
ウロボロス

Ouroboros
Uroboros
神・・・なのかどうかはともかく、本人が話す術を持たぬ故、私ハデスが説明を引き受けることとなった。
「神々の宴」の世界では、私と密接な関係にあるのでな。
ウロボロス、語源はギリシア語の「尾を貪り食うもの」。古代の象徴物の一つで、己の尾を噛んで円形を成す蛇または龍の図をこう呼ぶ。
世界創造が全にして一であるといった思想を表すとされ、グノーシス派(gnosis/古代の神秘思想の一つ)や天地創世神話で用い られた。「世界蛇」などとも呼ばれるな。
他にも、生と死、終わりが始まりになる円運動、永劫回帰や反対物(陰陽など)の一致等、意味する範囲は広い。
錬金術でも「万物が原物質から純粋な物質(賢者の石)に回帰する」という意味で創造・展開・完成の輪を示すのに用いられた。
賢者の石自体の象徴にもなったようだ。
ウロボロスの輪が囲むものは宇宙あるいは世界。またウロボロス自体が無限を表すため、今日の無限大の記号(∞)のモデルにもなった。
蛇は脱皮をするため、古い肉体を捨てて新たな肉体を得る、つまり不死身の生物だと考えられていたことも追記しておこう。
北欧神話に、ウロボロスと似たような蛇が見られる。ヨルムンガンド(Jormungandr)という名のその蛇は、世界の中心たる ユグドラシル(Yggrdrasill)の大樹を囲む海底に沿ってかの樹を囲み、尾を銜えて眠ると言われる。フェンリルの兄弟だ。
タロットカードにも時折描かれているらしいから、興味があるなら見てみると良いだろう。
エアリエル

Ariel
私もアンディーンと同じで、誰だか分からない人がいるかもしれないわ。普段はエアリィって呼ばれてるから。
ま、知ったことじゃないんだけど。
とにかく説明するわね。
エアリエルってのは大気の精霊のこと。大抵はシルフと同一視されるわね。出典はやっぱり伝承。
語源は聖書に出てくるギリシャ語の「ariel(神の祭壇の炉)」だって。風っぽい語感だから意味が変わったのかしら。
シェイクスピアの「あらし(The Tempest)」にも出てくるから、いっぺん読んでみるといいわ。
自由自在に姿を消したりできるらしいわよ。
天王星の内側から12番目の衛星もAriel。
あと、天使にもいるわ、Ariel。「神のライオン」って意味の名だそうよ。悪魔として扱われる場合もあるみたいだけどね。
こんなもんでいい?もう面倒。
ガイア

Gaia
Gaea
説明、か。苦手分野だ。
でもまぁ、万事挑戦するのみだ。やったるよ。
出典はギリシャ神話。原始混沌の神カオス(Chaos)の子、大地の女神ガイア。ローマ名はテラ(Terra)もしくはテルス。
だが俺は男だ、混同すんなよ。父なる大地で何が悪い。
守護星は地球、というかこいつ自身が地球。そんなわけでガイアもテラも地球を示す言葉になりつつある、ような気がする。
こいつは天空神ウラノス(Uranus)を生んで、そいつとの間に12人の子供を作った。ギリシャ神話だと親子だろうが兄弟姉妹 だろうが結婚できるんだから驚いたもんだ。ゼウスに至っちゃ美少年を寵愛した、なんて話もあるしな。
2人が生んだ神は、オケアノス(Oceanos/大洋の神)、テテュス(Tethys/川の母)、テイア(Thea)、ヒュぺリオン(Hyperion/ 高きを行く者)、イアペトス(Iapetus)にテミス(Themis/掟の女神)にムネモシュネ(Mnemosyne/記憶の女神)、レア(Rhea/ 山の女神)にクロノスのティタン(Thitan)神族12人。次にブロンテス(Brontes/雷鳴)、アルゲス(Arges/落雷)、ステロペス (Steropes/雷光)のキュクロプス(Cyclops)族3人、最後にヘカトンケイル族のコットス(Kottos/怒り)、ブリアレオス(Briareos /活力)、ギュゲス(Gyges/大きな手足を持つ者)の3人。
他にもコスモスにポイベにエリニュス、と、こいつらが生んだ子供を挙げたらきりがない。よくまぁこんなに生めたもんだ。
ギリシャ神話に登場する神々の殆どが二人の血族、ってんだから相当だな。ある意味「神話の母」。
で、生んだのはいいんだが。ウラノスはティタン神族の12人以外を醜いとか言って地下に幽閉しちまうんだ。ひでえ親父だな。
それにキレたガイアはティタン神族の末っ子クロノスに金剛の斧を渡してだな、ウラノスの・・・あー、まぁアレだ。男の一番大事な部分 を切らせるんだ。我が子をけしかけて旦那を麻酔なし去勢させるたぁ、こいつもこいつで恐ろしい奴だ。
そんなに嫌なら生ませるな、ってことなのか?昔のことだ、避妊の方法なんて限られてただろうしなぁ。
ウラノスのブツが海に落ちて、その泡から愛と美の女神アプロディテが生まれたってのは有名な話だ。
大変な奴の名前を付けられちまったんだな、俺。
クロノス

Kronos
Chronos
人界における俺の扱いを説明しろ、と?ふむ、やってみよう。
出典はギリシャ神話で、ガイアとウラノスの息子、時の神だ。天空(=オリンポス)を統べる者として、天空神としても扱われる。
・・・などと言うと「天空神はウラノスだろう」と言われそうだが。クロノスはガイアに命ぜられてウラノスを殺し、彼に代わって 最高神となったんだ。つまり、二代目の最高神ということになる。同名だとややこしいな。気分も悪い。
また、ティタン族の統治者でもあり、農耕の神でもあり、冥王ハデスや最高神ゼウスの父でもある。
ゼウスが最高神となった理由はゼウスの項に述べてある。詳細はそちらを見てくれ。
だが、石と我が子を間違えるとは。・・・気付かなかったのか?同名の輩として情けない。
ローマ神話での名はサトゥルヌス(Saturnus)、土星の象徴でもある。
持ち物は大鎌あるいは砂時計、姿は老人。翼を持った姿で描かれる。
ギリシャ神話については説が多い。やはり人という生物は感嘆に値するものだな。ここまで多種多様な話を編み上げるとは。
どうやら俺も修行が足りんらしい。
シヴァ

Siva
Shiva
説明?面倒。他の奴にでもやってもらえ。
・・・俺じゃなきゃいけねぇのか?ったく、分かったよ。やりゃあいいんだろ?
出典はインド神話。ヒンドゥー教三大神の一人で破壊神。「踊るシヴァ神」って彫像もあるから、そっちで知ってる奴もいるかもな。
ちなみに三大神の他二人は創造神ブラフマー(Brahman)と維持神ヴィシュヌ(Visnu)。どっちも有名。
司るものは破壊・再生・生殖・舞踊その他色々。パールヴァティー(Parvati)って妻とガネーシャ(Ganesha)、スカンダ(Skanda /韋駄天)って息子がいる。マジ?妻子持ち?
インド最古の宗教的文献「リグ・ヴェーダ(Rg-veda)」の中じゃ暴風雨の神ルドラ(Rudra)。モンスーンの神格化だっつーから、俺たぁ 正反対だな。
その他にも、俺を表す名は1000を超すとか。名乗り放題?
外見のほうは・・・青黒い肌、服は短い虎皮の腰巻のみ、首にはコブラを巻き、髪は荒々しく束ねて巻き上げ、眉間に第三の目、額には横 に白く三本線が引かれ・・・。なかなかに壮絶だな。
第三の目は激しい炎を出して全てを焼き尽くす。ほぉ。
精力絶倫なんで男性の象徴。「リンガ(Linga/陽石)」っつー・・・そのー、だ、男根の形で表される。誰だ、そんな形にするって決めたのは!
でも苦行者としても祭られてる。マハーヨーギン(大苦行者)なんて異名もあるくらいだからな。あー、お前も見習えって声が・・・
乗り物は白い雄牛、ナンディ(Nandi)。だからインドじゃ牛肉食えねぇ。
日本だと大黒天なんて呼ばれてたりもする。七福神の一人だから、わりと馴染み深いんじゃねぇ?大自在天に伊舎那天、不動明王なんかもそうだ。やっぱ多いな、名前。
ふぅ、こんなもんか。
ゼウス

Zeus
すまないな。さすがに本人を引っ張り出すことはできなかったらしい。
と、いうわけで、急きょこちらに依頼が回ってきた。この項は私アビスが説明しよう。
出典はもちろんギリシア神話。ラテン名ではユピテル、英語名ではジュピター。どちらも綴りは同じJupiterだ。お察しの通り、 木星の名は彼にちなんだものだ。太陽系最大の星であり、従える衛星も最多だからだろう。衛星はどれも彼の愛人の名だが。
樫の木(オーク)が神木、鷲が彼に仕える鳥だそうだ。やはりどちらも立派な姿をしているからか。
だが、巷では浮気性だの女たらしだの言われているんだ。そして否定はできない。困ったものだ。
何しろ、この男の愛人は両手の指に余るほど多い。一般的に正妻と言われているのはヘラ(Hera/結婚の女神)だが、その前にも メティス(Metis/オケアノスの娘)、テミス、エウリュノメ(Eurynome/ティタン神族の一人)、デメテル(Demeter/豊穣の女神)、 ムネモシュネ、とこれだけの結婚相手がいる。
人間・妖精(ニンフ)の愛人に至っては、レト(Leto/ティタン神族の一人)、イオ(Io/川の神の娘)、エウロペ(Europe/ フェニキア王の娘)、マイア(Maia/プレアデス七姉妹の一人)、タユゲテ(プレアデス七姉妹の一人)、 カシオペイア(Kassiopeia/エチオピアの王妃)、エレクトラ(Elektra/プレアデス七姉妹の一人)、カリスト(Kallisto/ アルテミスの侍女)、レダ(Leda/スパルタの王妃)、セメレ(Semele/テーバイの王女)、アルクメネ(Alkmene/ヘラクレスの母親) 、ダナエ(Danae/ペルセウスの母親)、アイギナ(アソポス河神の娘)と数多い。
加えてガニメデ(Ganymede/トロイアの王子)。れっきとした男だ。男の愛人は彼一人だが、彼がよほど麗しい少年 だったのか、それともそんなに飢えていたのか・・・。
その上、正義を愛し嘘を許さないと言いつつも、婦女暴行は明らかに正義でないし浮気を隠すために多数の嘘をついてもいる。女性(人妻) をモノにするため旦那に化けたりもしているし・・・。その辺の倫理観はどうなっているんだと問い詰めてやりたいな。
ちなみにゼウスが起こした誘拐事件はハデスの比でない。というか殆どが誘拐か詐欺だ。だから落ち込むなハデス、上には上がいる。
こんな浮気者にも人望があったらしいから不思議なものだ。私だったら到底信用できない。
・・・あぁ、何だか悪い面ばかり語ってしまったな。すまない、あとで良い面も探しておく。
ハデス

Hades
何、説明?貴様、一日に冥府を訪れる者の数を知った上で言っているのか。そんな暇は無い、去れ。
・・・裾を掴むな、裾を。
分かった、引き受けるから放してくれ。・・・まったく。
本家ハデスの出典はギリシア神話。ポセイドンとゼウスの兄だ。別名としては「ゼウス・カタクトニオス(地下世界のゼウス)」。ローマ名はプルトー (Pluto)。冥王星の名でもあるから、こちらのほうが有名かも知れん。
地下世界の神ということで鉱物と関連付けられ「プルトン(富める者)」とも呼ばれ、地中から芽を出す植物と関連付けられて豊穣神としても 崇められるようになった。
黄泉の国の支配者であり、死者たちの王だ。陰気だ何だと言われているが、そういう輩には何千年も地底に閉じ込められてみろと言って やりたいな。誰だって陰気にもなるだろうが。
それに好き好んで冥府の地にいるわけではない。領地の決定方法がくじ引きで、それで地底(冥府)を割り当てられてしまったというだけだ。
あぁ、冥府と地獄とは違うぞ。冥府は地獄のように人を罰するための場所ではないからな。冥府自体がハデスの名で呼ばれることもあるが、 これも元は「冥府の王」としてのハデスが転じたものだ。
妻の名は、デメテルの娘ペルセフォネ(Persephone)。・・・妻と言っても恋愛結婚ではないのだが。
攫った。
・・・まったく・・・!同名の者として肩身が狭い。それほどその娘に惚れ込んだのだろうが、誘拐とは!
人間の中には冬が嫌いだという者もいるだろう。すまない、冬ができたのはその結婚のせいなのだ。
冥界のものを食べた者は冥界に属する、という取り決めがあってな、ペルセフォネはそれを知らず、ハデスに差し出された柘榴を口にして しまったのだ。そのため彼女には一年のうち、どうしても冥界で過ごさねばならぬ時期ができてしまった。その間デメテルは嘆き悲しみ、 地上には実りがもたらされない。それが「冬」の始まりなのだ。私が謝るところではないのだが、やはり同名の者として・・・な。
その代わり、彼女が地上に戻る時期にはデメテルの喜びが地上に満ちる。これが「春」の始まりだ。
とは言え、カフンショウとかいうものを患っている者は、それすらも嫌がるのだろうが。
説明はこんなところでいいだろうか。もう話す気力がなくなってきた。
フェンリル

Fenrir
何か面白そうなことをやってるから、参加させてもらうことにしたよ。
えーと、説明すればいいんだね。了解。
僕の名前は北欧神話の狼が元になってるんだ。フェンリスって呼ばれることもあるみたい。
魔物なんだけどね、上顎は空に、下顎は地面に届くって言われるくらい大きい狼なんだって。
ロキって悪戯好きの神様とアングルボザっていう巨人の子供だよ。兄弟はヨルムンガンドとヘル(Hel/冥府の女王)。
「フェンリル」の力を怖がった神様たちは、どうにかして彼を戒めようと考えた。それでまずレージングって枷を作ったんだけど、力試し って言ってそれを付けさせたら、フェンリルはあっさりそれを壊しちゃった。神様たちは驚いて、レージングの2倍も固いドローミって 枷を作った。でも、やっぱりそれも壊されちゃう。困った神様たちは、グレイプニルって魔法の紐を作った。これは本当に強くて、フェンリルにも 切れなかった。だから彼はその紐で縛られちゃうんだけど、おとなしく縛られたわけじゃなかったんだ。
神様たちにグレイプニルを見せられて「これを引きちぎれるか?もし駄目でも必ず紐は解いてやる」って言われたフェンリルは、 「お前らの中の誰かが、俺の口に右手を差し込んでいる間は縛られてやってもいい。そうしている間はお前らの言葉を信じよう」って言って 逆に神様たちを困らせた。神様はみんな怖がって尻込みするんだけど、チュール(Tyr/契約の神)が言われたとおりフェンリルの 口の中に右手を入れたんだ。そうやって神様たちはフェンリルを縛った。縛るのが目的だったんだから、もちろん解くはずがない。 それでフェンリルは怒り狂って、チュールの右手を腕ごと噛み千切ってしまったんだ。チュールは剣の神様でもあって、「神々の黄昏 (ラグナロク)」の時には非常な力を発揮するだろうって言われてたのにね。
そのラグナロクの時、フェンリルは自由になった。そして神々の王オーディン(Odin)、太陽のソル、月のマーニを噛み殺すんだけど、 ヴィーザルにその上顎を支えられ、下顎を踏みつけられて、残った片手で心臓を貫かれる。それがフェンリルの最期。
最期まで決まってる神話って少ないよね。そういう意味じゃ希少な話かも。
でもなぁ、何で僕だけ魔物なんだろ・・・。はぁ。
ヘルメス

Hermes
へぇ〜、また面白そうなことをやってるね。紹介?やるやる。
「ヘルメス」ってのはね、凄いんだよ。商業と通信の神で医術の神で幸運と財産をもたらす神で嘘つきとばくち打ちの神で泥棒の神で旅人の神。 生まれていくらも経たないうちに乳母の目を盗んでゆりかごから這い出し、はるか彼方エピリアまで出かけたんだ。そこでアポロン (Apollon/太陽神)の牛の群れを盗んで、そのうち2頭を焼いて食べちゃう。離乳食すっ飛ばして焼肉かぁ。うーん。
で、その牛の群れを洞窟に隠して家に帰ったヘルメスは、家の前に亀がいるのを見つけて、そいつの甲羅を剥がし、その甲羅と自分が食 べた牛の腸で竪琴を作ったんだ。その竪琴を上手に演奏して、怒って追いかけてきたアポロンをなだめちゃう。
その竪琴と引き換えにヘルメスは盗んだ牛を正式に手に入れた、ってわけさ。なんてエピソードだろ。
しかも生後7日で成人したっていうからもう、スーパーベイビー!
そんなスーパーベイビーヘルメスをゼウスは気に入って、使者の神って地位を与えた。死者、特に英雄を冥府まで案内する役さ。
生まれた直後に牛泥棒しちゃうような奴だから、神々の中でもずば抜けて利口で器用。その上人当たりも良かったからゼウスには重宝された。 何しろほら・・・ギリシャ神話のゼウスって言ったら、ああいう御方だから・・・。はぁ。
アルファベットと数と天文学の発明者で、度量衡の制度を初めて整備した者。神々に火を起こす術を教えたのもそう。
捕まえようとしても逃げちゃう「すばしっこい」金属ってことで水銀(Mercury、元素記号Hg)の語源。明け方か夕方のごく短時間にしか見られない 「すばしっこい」惑星ってことで水星(Mercury)の名でもある。たまに水星をメルクリウスって呼ぶ人がいるけど、それはローマ 神話での名前なんだ。だから結局は同じこと。フランス語だとエルメス、人間界じゃ有名なブランドなんだって?光栄だね。
おっと、言い忘れてた「ヘルメス」の出典はギリシア神話だ。ゼウスとマイアの息子だよ。
持ち物は、翼の生えたつば広の帽子(ペタソス)、翼の生えたサンダル、先端に二匹の蛇が絡んだ杖(カドゥケウスもしくはケーリュケイオン) を持つスリムな美青年☆
この杖は世界保健機関(WHO)の紋章にもなってるんだって。後々アスクレピオス(Asklepios/医術の神)の持ち物になるからかな?
あーあ、僕のほうも美青年って設定にしてくれれば良かったのに。「美少年」じゃ年齢的にアレだもんな。ちぇ、残念。




+ DVILS +

ケルベロス

Cerberos
Kerberos
や、悪いね。ウロボロスと同じでこいつも喋れねぇもんだから、代わって俺が説明するぜ。こいつも悪魔に分類して平気なのかは知らんが。
なーんで説明者が俺なのかって?そりゃあ決まってる、俺が魔界の情報屋ウィルさんだからさ☆
まーいいや。とっとと説明始めるぜ。
出典はギリシア神話。地獄の番犬で、生者を冥府の中に入れず、死者を冥府から逃げ出させないよう見張るのがオシゴト。捕まったら 食われちまうからご用心。
例外的に、ケルベロスが見逃した奴らがいる。オルフェウス(Orpheus)、それにプシュケ(Psyche)の二人だ。オルフェウスは竪琴を 奏でてこいつを魅了し、プシュケは蜂蜜入りケーキで手懐けた。単純?
ヘラクレス(Herakles)の12功業の中にも、「ケルベロスの生け捕り」ってのがある。奴は力ずくでケルベロスを地上まで連れ出した らしいぜ。すげぇな力自慢。素手でここまでやるか。
で、そん時に垂れたよだれからトリカブトが発生したなんて言われてる。噛まれたら速攻で傷が腐りそうだな。もっとも、こいつが噛むのは 亡者だから、特に意味はなさそうだけどな。ははっ!
エキドナ(Echidna)ってぇ蛇女とテュポーン(Typhon)って巨人との間に生まれた子だ。エキドナは怪物の母って言われるほど多くの モンスターを生み出してる。その内の一人・・・っていうか一匹っていうか・・・まぁそれがこいつだ。兄弟には、有名どころ でヒドラ(Hydra/多頭の蛇)やスフィンクス(Sphinx/エジプト王家のシンボル)、キマイラ(Chimera/合成獣)なんかがいる。 他にもオルトロスとかラドンとかな。あ、ヘラクレスの12功業最初の一つ「ネメアのライオン退治」のライオンもこいつらの子供な。 しし座になったっつーヤツだ。
頭の数は3から50から100まで諸説あるが、主に3つで描かれるな。犬だけじゃなくってライオンって言われる事もあるらしいぜ。
尻尾は龍の頭をした蛇だとよ。どんなだ。
やっぱウロボロスと同じで、こいつにも北欧神話にそっくりさんがいるんだ。それがガルム(Garum)。
霧の国ニフルヘイム(niflheim)の入り口にいる番犬でな、死者の国の女王、ヘルの守り手だそうだ。
へぇ、面白ぇのな。調べりゃ調べるほど面白ぇや。こんなの全然知らなかったぜ俺。
よし、メモっとこう。
ファウスト

Faust
説明?面白い。やってやろうではないか。
Faustという名はドイツ語で「拳骨」を指し、英語のfistにあたる。
そもそもファウストとは本来、悪魔の名ではない。15〜16世紀頃、南西ドイツに実在したと言われる博士ゲオルク・ファウストのことだ。
宗教改革者ルターと同時代の人文学者であったが、一冊も著書を残さなかった。
医師・錬金術師・占星術師としても知られ、その存命中から、彼の身辺には奇怪な伝説や風聞が囁かれていたという。
悪魔メフィストフェレスを召喚して契約を結んだ、などというのはその最たるものだ。ゲーテの戯曲「ファウスト」も、それを下敷き にして作られた。
ゲーテのみならず、レッシング、マーロウ、ハイネ、トーマス・マン、ポール・ヴァレリーなど、数多くの人物が彼の生涯を題材とした作品を 生み出している。読み比べてみるのもいいかもしれぬ。
ちなみに、実在したファウストは、どうやらゲーテの作中に登場する人物ほど謙虚な人物ではなかったらしい。
「栄光顕示欲が強く、名声をたくみに悪用した」人物だそうだ。フン、小物だな。
南ドイツのマウルブロン修道院という場所には、「ファウストの塔」なるものもある。ファウストはこの塔に篭っては、夜ごと魔術の実験を 繰り返していたと言い伝えられている。現在でもここで学んでいる神学生がいるそうだ。この修道院は世界遺産にもなっている。
だが、神学生とは。行ってたぶらかしてやろうか。
マモン

Mammon
「七つの大罪」では貪欲(greed)を司る悪魔とされていますね。動物を当てる場合は狐の姿で描かれます。他の大罪は以下の通り。
傲慢−Pride−:ルシファー(Lucifer)/ライオンまたは孔雀
嫉妬−Envy−:レヴィアタン(Leviathan)/蛇
暴食−Gluttony−:ベルゼバブ(Beelzebub)/豚
色欲−Lust−:アスモデウス(Asmodeus)/サソリ
怠惰−Sloth−:ベルフェゴール(Belphegor)/熊
憤怒−Wrath−:サタン(Satan)/ユニコーン
メフィストフェレス

Mephistopheles
や、たびたび失礼。ここの項の説明も引き受けることになった情報屋のウィルでっす。
やっぱ魔王を引っ張り出すってなぁ無理だったみてぇだな。ゼウスもそーなんだって?どこも同じか。
ちゃっちゃと説明すんぞー。
出典はドイツの伝説。名前の由来はギリシャ語の「me tophos philes」で、意味は「愛してはいけない光」もしくは「光を愛さない者」。 まー確かにな。
グリフォンか、あるいはドラゴンに似てるそうだ。んで、黒い毛に覆われてて、尖った嘴と翼があって、老人やら紳士やらの姿で現れると か。頭の上には角、足はロバの蹄、背中には収納可能なコウモリの翼。良く分かんねーや。
ファウスト博士が悪の道に堕ちるかどうかで神様と賭けをしたっつー悪魔だ。賭け自体には勝ったが勝負には負けた。つまり、ファウスト を誘惑すんのには成功したんだが、魂を手に入れるこたぁできなかったんだ。しかも天使に見惚れたせいで。馬鹿か。
そんな感じで、ゲーテの作品の中じゃ、あんまいい扱いはされてねーな。神様の掌の中で転がされてるっつー感じ。
魔王ルシファーの手下で地獄の大公ってからにゃ、随分と格上の悪魔だってことに間違いはねーんだけどなぁ。
元になった伝承じゃ、ファウストの魂をずたずたに引き裂いて地獄に落とすってことになってんだが。
「空飛ぶ魔神」とも言われてて、天に舞い上がっちゃ神の取り決めを探ってくるんで未来のことにも通じてるとか。天文学・占星術・ 気象学に関する知識が豊富で、炎の術と五感に訴える幻術に長け、嵐を起こしたり、世界のどっからでも一瞬で物品を取り寄せられる。
すっげぇよなー、さすが陛下の下敷きになった悪魔だ。
・・・こーやって書きゃ、陛下本人に見られても誤魔化せるか?
あー、でも「地獄に堕ちたことを悔やんでる」ってのはどーなんだ?努力次第で天界へも行ける人間を羨んでる、って・・・ 自分で反逆を起こしたってぇプライドがあるせいで許しを乞うわけにもいかなくて、全ての罪が許されるっつー最後の審判を待ってる、 とか・・・。屈辱を耐え忍んで地獄に居座って・・・?
って、やべーよ俺!こんなん陛下に見られたらどーすんだ!
俺は殺されるのか?えぇ?おい。冗談じゃねぇ。よし、逃げるとすっか。じゃーな!
ルシファー

Lucifer
説明とはまた、面白そうなことをやっているな。俺も参加させてもらおう。
出典は旧約聖書、呼称はイザヤ書の第14章12節の記述による。ヘブライ語で「明けの明星」金星を意味するHeylel Ben−Shachar の翻訳語として当てられたのだそうだ。
「あしたの子、ルシファーよ、いかにして天より堕ちしや」という一節がある。ルシファー(金星)をなくなったばかりのバビロン王に なぞらえたこの一節が誤読され、さらにルカによる福音書の第10章18節でイエスが語ったとされる「私は、サタンが稲妻のように 天から落ちるのを見ていた」という一節と結び付けられたことにより、サタン=ルシファーという考えが広まったらしい。
「ルシファー」は英語からの音訳で、「ルキフェル」「ルシフェル」「ルチフェロ」などとも表記される。語源はラテン語、「luc(光)」 と「fer(生む)」。「光を掲げる者」「朝(あした)の子」等の称号からもそれは窺える。
今は随分と陳腐な名に成り下がってしまったがな。有名すぎるのも考えものだ。
「七つの大罪」では傲慢を司る悪魔とされている。その辺りのことはマモンが説明したようだから割愛するとしよう。
キリスト教の伝統的解釈によれば、元々全天使の長であったルシファーは、傲慢もしくは人間に対する嫉妬により神と対立し、天を追放 されて神の敵対者になったのだという。地獄の君主、サタンとしてな。
大天使長という最高位にいた頃のルシファーは、天使の中でも最高の気品と美しさを備えていた。神から最も愛され、唯一神の玉座の右側 にはべる事が許されていた。それが反乱を起こした理由は、先述したとおり傲慢もしくは嫉妬による。
傲慢というのは、ルシファーが己に与えられた権威と力とに驕り、自分は他の者に服従すべき者ではないと考えたとされる場合。
嫉妬というのは、神が人間を寵愛し、天使以上の優遇を与えようとしたことに不満を抱いたとされる場合。さて、どちらが正しいのだか。
神の右腕として活躍する四大天使ミカエル(Michael)とは双子の兄弟とする説もある。その場合はルシファーの暗黒面を強調するため、 ミカエルと瓜二つの外見に浅黒い肌を持つ格好で描かれる。ふむ、やはり人間は、目に見える違いを欲するものらしい。
ルシファーが登場する作品に、ダンテの「神曲」とジョン・ミルトンの「失楽園」が挙げられる。かなり名高い作品であるらしいから、 ルシファーの事をもっと知りたくば読んでみるといいだろう。


参考:Wikipedia  幻想図書館  天使の世界  Dictionary of Pandaemonium 広辞苑第五版



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