「うー・・・・・・とりっく・おあ・とりーと・・・・・・」
「酔っ払いは黙って××でも吐いていろ」 「三蔵、仮にも聖職者の身分でその単語を口にするのはどうかと思いますよー」 「うん?『寝言は寝て言え』のほうがよかったか」 「それならまあ、許される範囲・・・・・・ですかね?」 「論点がずれとるねー。天兄、なんでそんな格好しとるん?」 「知らねえよ・・・・・・起きたらこうなってたんだよ」 「娼館で間違えたんじゃありませんか?」 「覚えてねえ・・・・・・」 「酒の飲みすぎで記憶中枢が破壊されたか。気の毒に」 「おいコラ、なんだその言い草は?」 「思ったことを率直に口にしたまでだが」 「三蔵・・・・・・(生ぬるい眼差し)」 「どうかしたか?」 「あれ、天兄。頭の輪っかが無うなっとるよ?」 「んあ?・・・・・・あ!ああ!?」 「え、あれって一生取れない呪いがかかってるんでしたよね」 「かかってねえよ!こいつの意志次第で取れる呪い、だ!・・・・・・っくしょー、頭痛え・・・・・・」 「ええ?じゃあ三蔵が外したん?」 「いや。・・・・・・」 「・・・・・・いててててて!おい!無言で念飛ばしてんじゃねえよ!」 「少なくとも呪いは残っているようだな。さて、本体はどこに消えたのやら」 「・・・・・・それを確かめるだけにやったのかよオイ」 「他に確認する方法もないだろう」 「仏の慈悲って言葉はどこに消えたんだろうな」 「天兄の輪っかと一緒に出かけたんとちゃう?」 「天覚にとってはどちらも酷い状況ですね」 「お前ら・・・・・・」 「ところで天覚、『とりっくおあとりーと』とは何のことだ」 「・・・・・・ああ?」 「起き抜けに言っただろう」 「鳥苦、尾亜、鳥糸?」 「それだとなんだか鳥がかわいそうな感じですねえ。確か、どこか西の国々の祭りが由来の言葉だったと思いますよ」 「そうなのか・・・・・・?」 「知らないで言っていたんですか」 「・・・・・・よく分からん」 「やっぱり記憶中枢がやられて」 「それはもういい。で、意味は?」 「ええと・・・・・・『寄付をよこさなければ暴れるぞ』とか、そんな意味だったかと」 「寄付・・・・・・」 「やらんでも暴れとるやん」 「う・る・せ・え・よ(頭わしづかみ)」 「きゃー!痛い痛いー!」 「・・・・・・天覚」 「うおぉぉあ!?あだだだだだ、こら!おい、無言で締め付けんなって言ってんだろーが!」 「反省なし、か」 「いででででで!あー悪かった!俺が悪かった!」 「よかろう」 「・・・・・・っはー・・・・・・この破戒僧が(ぼそっ)」 「天覚」 「独り言だ」 「そうではない。ほら」 「・・・・・・あ?何だよこりゃ」 「寄付」 「寄付って・・・・・・布施(もらいもの)だろ、これ。明らかに」 「しかも黒豆ですか」 「それで少し黙っていろ。煮汁が二日酔いに効くそうだから」 「二日酔いで暴れてたわけじゃねえ・・・・・・もがっ!」 「はいはいはい、静かにしてましょうねー。豆くらいなら僕が煮ておきますから」 「いいから離せ!」 「天兄。三蔵な、寝不足やねん」 「ああ?それがどうした。あいつは寝足りてるほうが珍しいだろ」 「ちゃうねん。三蔵、昨日天兄のこと待っとったんやで。ちゃんと帰ってこんかったらあかんから言うて」 「ただでさえ不健康ぎみなんですから、僕らがしっかりしていないと。ねえ?」 「『ねえ?』って、その笑顔が怖ぇよ。・・・・・・ったく、他人の心配してる余裕があるなら寝てろっての」 「でしたら心配事を増やさないように。豆はおかゆにでも入れましょうかね」 「出来上がったら呼べ。着替えてくっから」 「はいはい。ああ、天覚?」 「あ?」 「いい子にしないと切り刻みます(包丁きらめかせ)」 「・・・・・・おう(引)」 「・・・・・・冗談ですよ?」 「目が本気だぞ」 「気のせいです。さあほら、着替えてくるんでしょう?」 「う、あ、おい!」 「いってらっしゃーい(戸を閉め)・・・・・・さて。明律、豆を洗ってもらえます?」 「はーい。二人とも良うなるとええなー」 「そうですね。お布施の豆なら縁起も良さそうですし、きっと大丈夫ですよ」 「うん、そやね!」 小噺1『酔っ払いとハロウィン』 END. up date 07.10.17 |
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